ka-yu 1st ALBUM『OUTSET』SPECIAL INTERVIEW

OUTSET SPECIAL INTERVIEW
ka-yu 1st ALBUM
『OUTSET』
ファン投票による収録曲選定、
自分以外の声に耳を傾けた制作、
そして今の音楽活動に対する想い。
Interview & Text HIROKI KATAGIRI
01
周囲のアイディアを採り入れたアルバム制作
ーーアルバム収録候補曲をファンクラブ向けポッドキャストで公開し始めたのが昨年11月末。半年以上におよぶプロジェクトを経て完成したアルバム『OUTSET』ですが、以前までの作品と比べても非常に骨太な仕上がりですね。
ka-yu

レコーディングやミキシングなどで、意識的に何かを変えたということはなかったんですが、関わってくれている人たちの意見をこれまでで一番多く採り入れたアルバムだと思っていて、そこが変化として表れているのかもしれません。

ーー従来はどんな作り方をされていたんですか?
ka-yu

ソロアルバムを作るときは自分がプロデューサーなので、基本的に僕が音やアレンジの方向性を固めて、それをレコーディングに参加してくれるミュージシャンに再現してもらうようなスタンスで進めていました。

でも今回は、僕がまずベーシックなアレンジをフル尺で作り、それを普段のライブでギターを弾いてくれているKyrie君に投げて、ブラッシュアップしてもらっていったんです。そこで決まったアレンジをドラムのCHARGEEEEEE…君に渡し、曲を聴いて別の叩き方にしたかったら自由に変えてもらう、という流れでしたね。

僕のベースについても同じで、宅録で録ったベーストラックをエンジニアさんに渡して、アルバムの全体的な方向性を伝えつつ、「でも細かいところはお任せします」と。そんな風に、楽曲制作に関わってくれた人のアイディアを前面に出したと言いますか、僕の意見だけで進めなかったのが今回のアルバムの特徴になっています。

ーー自分以外のアイディアを積極的に採り入れてみようと思ったきっかけは?
ka-yu

自分の凝り固まってしまった考え方から抜け出してみたかったんだと思います。僕は人とコミュニケーションを取るのが苦手なので、正直なところ全部自分で決めて、全部自分でやっちゃう方がラクなんですよ(笑)。

だけど、それだと今までと変わり映えしないから、周りの意見を素直に採り入れて作ってみたら違うものが見えるんじゃないかと、自分の中からだけでは生まれない"何か"を求めていたのかもしれません。

02
ファン投票で生まれた『OUTSET』
ーー今回のアルバム収録曲をファン投票形式で選んだのも、その"何か"を求めたからですか?
ka-yu

そういった気持ちもありました。実は、今回の楽曲って候補曲も収録曲もすべて音楽活動を離れる前から存在していたものなんです。しかも、候補にした曲以外にもまだまだ曲があって、そこから何とか絞っていったんですけど、どれもすごく気に入っている曲だからこそ、これ以上は自分じゃ選べなかったんです(笑)。

あと、僕が皆さんに聴いて欲しい曲を提示するのも良いんですけど、ファンの皆さんがデモを聴いて「この曲の完成形が見たい」と思うものを形にしていくという作り方も面白いんじゃないかと思ったんですよね。

ーー投票結果は予想と違うものでしたか?
ka-yu

投票で選んだのはアルバムの12曲中7曲だったんですが、半分くらいは予想とまったく違う曲になりました。でも、そういった"ズレ"が新鮮でしたし、面白かったです。

ーーちなみに、ka-yuさんの推し曲は?
ka-yu

個人的には「lost summer(仮題)」がすごく好きだったんですけど、残念ながら選ばれず。あと、「003(仮題)」はきっと選ばれるだろうと思って、ほぼ完成という状態まで仕上げていました…。

ーーそれは悲しい…(笑)。
ka-yu

いや、その"ズレ"を求めて実施した投票なので(笑)。ほかにも、「That day」「夏の幻」「Snowfall」などは皆さんにも気に入ってもらえるだろうと思っていましたし、逆に「君が笑うから」や「Red Sun」が選ばれたのはちょっと意外でしたね。

そういう意味だと、自分がすべてプロデュースしてきた作品たちと違って、今回はファンの皆さんがプロデューサーになってくれたような感覚もあります。

レコーディング中のka-yu
03
Kyrieとの共同アレンジ
ーー投票後に歌詞が載った曲、メロディーラインやアレンジが大きく変化した曲もありました。
ka-yu

音楽活動を離れる前から10年以上も経て完成した楽曲が多かったので、当時は見えていなかった言葉やアレンジのアイディアが自然と入ってきた曲がたくさんありましたね。特に歌詞については、今だから書けた言葉も多かったと思います。

アレンジに関しては、先ほどお伝えしたように基本的に僕がベーシックを作り、そこからKyrie君がコードを分解して音同士がぶつからないように調整してくれたり、「こっちのコード進行の方がもっとドラマチックな展開にできそう」といった提案などもしてくれて。ライブでも常々感じているんですが、僕はKyrie君が持っている音の選び方のセンスがすごく好きなんですよ。

ーーKyrieさんのアレンジに驚かされた曲はありましたか?
ka-yu

「Red Sun」と「Snowfall」は特に驚きました。僕がもともと「こういう風になればカッコ良さそうだな」とイメージしていた方向にちゃんと寄り添いつつ、想像していた何倍もカッコ良くしてくれたんです。

ーー「Red Sun」は今作中で唯一ベース始まりの楽曲ですね。
ka-yu

ベースのフレーズで曲が始まるという構想自体は僕のアレンジ段階からあったものなんですが、「ベースを目立たせたい」というよりも「ちょっとハネ感のある曲にしたい」というアイディアでした。

今回の収録曲の中では最後の方にアレンジを練った曲ですね。僕はアレンジの方向性に行き詰まるとスラップ奏法に走りがちなので、間違いないと思います(笑)。

ーー使っている奏法で制作時期がわかるのは便利ですね(笑)。「Snowfall」は、イントロで響くベル系のシンセサウンドが印象的でした。
ka-yu

鍵盤を入れようと提案してくれたのもKyrie君で、音色もKyrie君が季節感を意識してくれた結果ですね。僕は基本的に自分のデモに鍵盤を入れないので、Kyrie君が苦労しながら試行錯誤してくれました。

ーーファンの皆さんによる選曲、そして卓越したアレンジを経た結果、とても振り幅の広い楽曲群になりました。1枚のアルバムとしてまとめるにあたってどんなことを意識していましたか?
ka-yu

それぞれの楽曲は異なる表情を持っていますが、アルバムとして並べたときに自然な流れになることを大切にしました。結果的に曲調の振り幅はありますけど、ジャンルやテンポの違いよりも、その曲に込めた温度感や空気感を大事にして構成したので、自分の中では1つの感情の流れとしてつながっているんです。

04
『ひとりじゃないから』に込めた想い
ーー音楽活動を再開されてから最初の作品になった「ひとりじゃないから」で締め括られる曲順にもグッと来ました。
ka-yu

アルバムを作ろうと決めた頃から、この曲をラストにしたいなと考えていました。リリースをした背景もそうですし、歌詞の内容としても物語がしっかりとまとめられるような気がしていて。

あと、「ひとりじゃないから」は1曲の中でもグラデーションがあって。待っていてくれた皆さんへの想いを書いた曲ですが、間奏でちょっとカオスになる辺りは、今振り返れば僕自身が言葉だけでは高まる気持ちを言い切れずに溢れたからこそだなとも思います。

そういった曲の中での移り変わりやアルバムの流れなど、歌詞だけじゃない部分からも想いをなんとなく感じてもらえたら本当にありがたいですね。

05
感謝を伝えるための音楽
ーー月並みな表現かもしれませんが、まさに"みんなで作ったアルバム"なんだなと感じています。
ka-yu

これは僕の性格なんですが、昔から何に対しても不安が残ってしまうんです。「本当にこれでいいのかな、これで大丈夫かな」と。でも今回は、「曲はファン投票で決めたし、アレンジにはKyrie君のアイディアも入っているし…」と責任転嫁できます(笑)。

まぁそれは冗談ですけど、今までこういうことはやったことがなかったですし、「より良くなる可能性を秘めているところに賭けたい」という気持ちもあったので、すごく満足しています。何より、僕らはいつもファンの皆さんに届けたくて曲を作っているわけですから、そのファンの皆さんが聴きたいと言ってくれている曲を形にできたのがうれしいですね。

ーーアルバムリリース翌週の6月26日から、バンド形態で全国5ヶ所をめぐるツアーがスタートしますが、演奏の難易度が非常に高い楽曲もありますよね?
ka-yu

今までの作品はライブで弾きながら歌うことをある程度想定して作っていたんですが、今回はその曲を選んでくれた方のためにも、楽曲のクオリティーを最優先にして作っていったんです。

だからもう本当に不安です(笑)。そういう意味では、バンドとしてのクオリティーもすごく高められるんじゃないかなと思っていますね。あと、曲自体もお客さんの前で演奏することで新しい表情を見せることがありますから、きっと今回のアルバムの中にもツアーを重ねることでさらに成長していく曲がたくさんあると思いますし、それを僕自身も楽しみにしています。

ミキシングセッション
06
OUTSETというタイトル
ーー昨年50歳という人生の節目を迎え、さらにはベーシストとしての30周年というマイルストーンも目前に迫っていますが、今回「始まり」という意味も持つ『OUTSET』というタイトルを付けたのはどんな想いからなのでしょう?
ka-yu

『OUTSET』というタイトルには、「最初」や「再出発」といった意味を込めたわけじゃなくて、自分としては「感情が音になる瞬間」を表した言葉として考えているんですよ。

今回のアルバムは、過去に生まれた楽曲と現在の自分が出会い直すことで完成した作品ですから、節目を迎えるにあたっても、過去を振り返るだけではなくて、これからどんな音楽が生まれていくのかが楽しみなんです。

ーーそういったモチベーションはどこから湧いてくるのでしょうか?
ka-yu

誤解を恐れずに言うと、音楽的なモチベーションは昔に比べて低くなってきていると思います。今回のアルバムタイトルの話にもつながるんですが、「ここからもう一度」といった気持ちではないんです。

最初に話したように、僕には世に出していない音源がまだたくさんあって、しかも自分の中ではどれもすごく良い曲だなと思っていて。で、同じようにそういった過去に作って披露した曲に対して、いまだに「すごく良かった」「聴くと元気になった」と言ってくれる人だったり、リリースされることを励みにがんばってくれている人もいて、このまま形にせずに終わるのはちょっとな…と。

決してネガティブな意味ではないんですが、いつか必ず終わりは来るわけで、その上で自分が納得できるような音楽活動の幕引きにするためにはどんな風に活動していくべきなんだろうかと、ここ最近は考えています。ベーシストとしての節目というのも、おっしゃっていただいて「ああ、そうか」と思うくらいで、あまり特別な感情はありません。ただ、今までの活動を応援してきてくれた人たちへの感謝の気持ちだったり、「この曲を聴いてほしい」という想いは自然と湧いてくるんです。

ーー純粋に「音楽がやりたい」「ステージに立ちたい」という感情ではなく、ファンの皆さんへの感謝を表現する手段が音楽であり、それを直接伝えられる場がライブという考え方ですか?
ka-yu

そうですね。僕の場合、音楽やベースが好きだという気持ちは当然あるんですが、人生においてそこまで重要なものではないんです。もちろん、今までやってきた活動や音楽に関わる仕事は大切だったし、大事にしてきたんですけど。

そもそもバンドを始める前まではほかに熱中できる趣味があって、急にそれができなくなってしまったからベースをやってみようという感じでしたし。それで前のバンドに入ったんですけど、前のバンドの曲はやっぱり好きだったし、カッコ良かったので、これなら女の子にモテるんじゃないかって。そこが原点なんです(笑)。

ーー男の子が楽器を始める理由の95%くらいはそれでしょう(笑)。
ka-yu

ですよね(笑)。僕の場合は本当にそれがずっと音楽へのモチベーションだったので、年をとって「別にモテなくて良いや」と思えるようになった今、どうしてもモチベーションは下がりますよ(笑)。これはライブのMCでも言っていることですが。

そうなると、曲を作ったりライブをする目的というのは、感謝を伝えるために会いに行くというのが一番になるわけです。僕は言葉で何かを伝えるのが昔からできないから、行動で見てもらうしかないんですよね。

つまり、音楽活動を再開させたこともフルアルバムを作ったことも、口下手なりに何とか皆さんに想いを届けられるようにやっているだけ。なので、歌詞や曲を聴いてもらって、ちょっとでもそういう想いが伝わってくれれば良いなと思っています。

ーーだとすれば、先ほどおっしゃっていた「ファンの皆さんが聴きたいと言ってくれているものを形にできた」という今作こそ、どんな周年よりも節目と呼べるマイルストーンかもしれませんね。
ka-yu

はい。今作では、自分が良いと思う曲と皆さんが反応してくれる曲は必ずしも同じじゃないという新しい発見もありました。最終的には自分が表現したいものを大切にしたいですが、今回の発見をもとに、ファンの皆さんと作品を共有しながら作っていく感覚は今後も大事にしていきたいです。

Interview & Text HIROKI KATAGIRI
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